心理学の来し方行く末
心理学は人間の心(こころ)について考える学問ですが、100年ほどの歴史しか持ちません。科学としての心理学のスタートは、心は「意識」だと考えました。自分の意識を注意深く分析して、どんな感覚や記憶などから成り立っているのかを考えようとしました。心は、意識であり、意識とは様々な感覚要素の集まりだと考えました。
しかし、私たち人間は心の中を見ることはできません。優しい心を持っているといっても、その心そのものを見たわけではありません。優しい行動を取っているのを見て優しい人だと判断しているに過ぎません。こうしたことから、直接観察することのできない心を研究するよりも、外に現れる行動を研究するべきだという考えが生まれました。
[現代の心理学]
現代の心理学は「行動の科学」だといわれています。ただし、行動という意味を以前のような狭い意味には限定していません。行動から心のメカニズムを推論することは盛んに行われていますが、同時に無意識を重視する考え方も心理学の大きな柱として存在しています。
それでも心理学は行動の科学です。心理学が科学であることを目指そうとするとき、行動という客観的なものが必要になってきます。しかしそうはいっても、やはり心理学は、「心の科学」です。私たちは、医学や生理学的に人間を理解するだけでは、満足できないのです。私たちが人間の心について考え、コミュニケーションを図るとき現代心理学は大きなヒントを与えてくれるでしょう。